今日は新規開発地の地名についても考えていきたい。この問題は、新旧住民の都市的な様相をなすにあたって大変重要なことだからだ。

東京のベッドタウンとして都市開発がされる所では、区画事業整理が行われると、地名変更にいたるケースも多い。その一例が、佐倉市のユーカリが丘や千葉県木更津市の港南台といった場所にある。前者は井野、後者は小浜という地名がそれぞれ区画整理事業を行い、ユーカリが丘や港南台となった。その反面、ユーカリが丘駅の隣接駅で同じ市内にある京成線うすい駅のように、駅周辺は王子台という地名でも、駅名だけは「臼井」としてそのまま残しているケースもある。その「うすい」駅であるが、正式には「京成臼井」であるが、駅名表示・電車の行き先では「うすい」と平仮名で表記される。これは京成線と乗り入れる北総鉄道に「白井」という駅があり、漢字で書くとまぎわらしいために1991年の北総線と京成線の乗り入れる全面ダイヤ改正の頃に「うすい」と表記されるに至った。このダイヤ改正では当時は少数派だった各駅停車「臼井」行きを増発したので、「うすい」の名が大きく知れ渡ることになったのも駅名を漢字から平仮名に変える要因であった。
もっとも、ユーカリが丘駅は1982年に宅地化の進展で開設されたニュータウン型の駅で、京成の駅の中では比較的新しい方の部類に入る。

このユーカリが丘・うすい両駅からわかるのは、現在の市町村合併の市名のネーミングとも同じ問題を秘めていることがわかる。市町村合併の問題の一つに、イメージアップを図るという点があるが、新興住宅地はどうしても「さつき」だとか「もえぎ」「あざみ」といった木や花の名前や富士、京、湘南といった特定の地名、海や近隣の山などが好きな傾向にある。
実際に開発が著しく進み、人口の大きく増加している東急田園都市線沿線は、あざみ野や藤が丘、つきみ野などの駅名をネーミングにすることと横浜という港町のブランドをともに手に入れられる事によって人気を得ている点がある。実はこのような地名に弱いことが市名におけるブランド化を進めている点もあるのではないかとも考えられる。また、これらは市や不動産会社との戦略とも考えられる。
うすいの場合は、字が読みづらいために平仮名にしていったので、イメージ戦略として平仮名にしたのではない。

一方で、更に昔の名前などを大切にするべきではないかと考える。実際に
ユーカリが丘駅近辺の、佐倉市の井野という地名も広範にわたっている。これは急速な都市化による地域の変化と旧住民との軋轢を和らげるべく、新旧住民の共存として地名が残存する必要があるためではないか。
そもそも都市というものは、変わり行く社会を反映しているものであり、時代の変化に対応するのは当然といえる。それをいきなり新住民に媚びていて、見栄を張るようなことは本当はあってはならないことでもある。しかし、商売的に仕方ない点もあるのは認めざるを得ないところだ。これもあまり商売の具にされてしまっても困る。市名や地名をつけるときは、もう少し都市・地域という概念を考え、変に媚びたような名前は避けるべきではないか。市名に関しては、これよりも問題が大きくなるので、また別の機会にお話します。

佐倉市井野近辺
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佐倉市臼井・王子台近辺
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